秘密の地図を描こう
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肩を揺すられてキラは顔を上げる。
「飯だ、と言っただろう?」
今はそこまでで中断しておけ、とバルトフェルドが言う。
「もうそんな時間ですか?」
まだ、少ししか経っていないと思っていた。キラは素直にそう告げる。
「それだけ集中していた、と言うことか」
いいことなのか、悪いことなのか……とバルトフェルドはため息をつく。
「そうなると、あいつの苦労も察せられるな」
まめに面倒を見ていられる、と彼は続けた。
「……僕、そんなに迷惑をかけていますか?」
みんなに、とキラは真顔で言い返す。
「昔からだよなぁ、坊主は」
笑いながらマードックが口を挟んでくる。
「それで俺たちやフラガさんがどれだけ苦労していたか」
飯を食わせるだけでも一苦労だった。きっぱりとしたそう言われて、キラは体を縮めるしかできない。
「でも、まぁ……それも坊主のいいところだからな」
ともかく、と彼は続ける。
「飯、喰ってこい」
そう言って、彼はキラの頭を叩いた。
「……はい」
こういうときの彼らには逆らわない方がいい。そう判断をして、今までの分を保存する。そして、そのままパソコンにロックをかけると立ち上がった。
「ところで、何かあるのか?」
デッキが騒がしくなっているようだが、とバルトフェルドが口を開く。
「あぁ。あちらからクルーゼ氏の期待の追加パーツが届くというのでね。受け入れ準備をしているだけですって」
技術者も一緒に来るという話だが、と彼は続ける。
「……技術者じゃないかも」
真っ先に思い浮かんだ人物が来るのであれば、と呟く。
「アスラン対策も兼ねた人選なら」
「それはそれで頼もしいな」
にやり、とバルトフェルドが笑う。
「女性陣を矢面にだすのが気が引けるからね」
だからといって、キラをだすわけにはいかない。そう考えれば、もう一人ぐらい、アスラン対策ができる人材がほしかったところだ。そう彼は続ける。
「そうすれば、俺ももう少し、あれこれと動けるしな」
ラウがそれなりに信頼できるとわかったし、と彼は笑う。
「それも、お前が元気でいれば、の話だ」
と言うことで、しっかりと食事を食べさせる。その言葉とともに、がっしりと首に腕を回された。
「と言うことで、行くぞ」
そのままキラの体を引きずるように歩き出す。
「自分で歩けます!」
即座にキラはそう主張した。
「気にするな。何なら抱えて行ってやろうか?」
それはそれで楽しいぞ、とバルトフェルドは笑う。
「そう言うことは女性にしてください!」
自分はこれでも男だ! とキラは叫ぶ。
「……そう言いたいなら、もう少し太れ。どう考えても、お前の体重は女性と同レベルだぞ」
抱えられないだけマシだと思え、と即座に言い返される。
「第一、普段からあいつに女性扱いされているような気がするが?」
と言うよりも、ラクスと同レベルの扱いではないか。彼はそう言って笑った。
「そんなことはないです!」
その可能性はあるかもしれない、とは思っていても肯定できない。
「だったら、もっと体力をつけるんだな」
痛いところを突かれてしまう。確かに、最近はカガリにも負けているような気はするが……と心の中で呟く。
「俺の勝ち、だな」
バルトフェルドのこの言葉が無性に腹立たしかった。